いんでぃばいばる

日記と絵と小説かきます。コメントくれたら全部返信します。

雨漏り

「ポツリ」という音とともに首に冷たさを感じた。どうやら首に落ちた液体は天井から滴っているようだった。
妙だったのは今自分がいる場所は複合マンションの一階で、雨漏りなどするはずもなかったことだった。
しかし正体がわからないにしてもこのままにしておくわけにはいかない。私は仕方がなく床にコップを置き、液体が床を濡らすことがないようにした。
それから5分ほど経つと、コップに半分ほど液体がたまっていた。
何よりも不思議だったのはその液体の匂いだった。ピーナッツバターのように甘くもあり香ばしくもあるような匂いは、コップがいっぱいになりかける頃には部屋中に広がっていた。
私はふと我に返り、慌てて2杯目に替える。
天井からは相変わらず液体が滴り続ける。
そういえば朝からまだ何も食べていない。匂いと空腹に誘われ、私はひたすらコップの中を見つめていた。こんなに良い香りがする液体が、まずい筈はない……

気がつくと私はコップの中の液体を指ですくって口に入れていた。部屋に漂っていた香ばしさや甘み。その全てが口の中でとろけ、舌に絡み、えもいわれぬ旨味が私を襲った。もう少しだけ、もう少しだけと口に運ぶうちに、私はコップにあった液体を全て飲んでしまった。そのとき私は既に2杯目に手を伸ばしていた。
しかし私の甘美な時間を邪魔したのはインターホンのなる音だった。
不機嫌にドアを開けると目の前にはマンションの管理人がいた。
「御宅の家で雨漏りのようなものはありませんでしたか?実は上の階の飲食店が原因でして……」
「飲食店?道理でいい匂いがしたわけだ」
管理人は気まずそうに話しを続ける。
「飲食店のトイレから汚水が漏れております。なんでも芳香剤が流されて甘い匂いがするそうなんですが……